民謡回帰~遠い海~「吉野の木樵唄」「刈干切唄」

民謡回帰~遠い海~
2020年12月6日(日)[昼夜2回公演]紀尾井小ホール
本條秀太郎(唄・三味線)、木ノ脇道元(フルート)、安江佐和子(パーカッション)、笹沼 樹(チェロ)

梅本佑利:作編曲「吉野の木樵唄」、「刈干切唄」【世界初演】

【プログラムノート】

●「吉野の木樵唄」ー 《絡繰木樵人形》
三味線、唄、フルート、打楽器、チェロのための(2020)

誰かがゼンマイを巻くと絡繰人形は木樵を始める。ゼンマイが切れ始めると減速し、やがて止まる。誰かが巻いて、また動く。日本の音楽において速度の変化は頻繁に用いられてきたが、西洋音楽でいう、accel. や rit.とはまた異なるものです。不完全でどこか愛らしい、日本的なユーモアを動力にした絡繰人形です。

● 「刈干切唄」三味線、フルート、打楽器、チェロのための(2020)

刈干切唄(かりぼしきりうた)は本條秀太郎さんが作曲した作品で、紀尾井ホールで行われる本條秀太郎さんの演奏会のために、三味線ソロとフルート、打楽器、チェロのアンサンブルに作編曲しました。チェロのサーキュラーボウイングとトリルと、シズルシンバルのトレモロは、秋山の斜面に広がる壮大な草原を、フルートはそこに吹く風を描いています。
これを作編曲するにあたって、特に気をつけたことは、秀太郎さんによる三味線の間、拍感、空気感を壊さないことです。そのため、楽譜にどこまで記譜するか、どこまで細かく指示するか等、慎重に作曲する必要がありました。西洋楽器群が各々任意の速さで動いたり、音価が自由であったり、曲の所々で不確定を持つのはそのためです。
また、曲の中に、其々の楽器がピッタリ「揃う」瞬間を作り、幾つかの纏まりを作る事も大切にしました。

梅本佑利