梅本佑利 - 「スコアフォロワー(ScoreFollower)のTikTokプロジェクトはコンセプチュアルアート/音楽か?」スコアフォロワー創設者、Dan Tramte氏へショート・インタビュー

「スコアフォロワー(ScoreFollower)のTikTokプロジェクトはコンセプチュアルアート/音楽か?」

スコアフォロワー創設者、Dan Tramte氏へショート・インタビュー by 梅本佑利

「スコアフォロワー」(Score Follower)は、インターネット上で最大の現代音楽リソース、コミュニティ。

毎シーズン開催されるYouTube上での作品募集は、バーチャル音楽祭のような次世代の現代音楽イベントで、世界中の誰もが参加できる。審査員には各国の著名な作曲家が在籍し、応募数やその倍率の高さから、「スコアフォロワー」に選出されることは、世界的な現代音楽フェスティバルでの入選とほぼ同じような意味合いを持ち始めている。近年では、その影響が特に若い世代の作曲家の間で顕著であり、ある種「スコアフォロワー」は新たな現代音楽の潮流となりつつある。

 

近年、「スコアフォロワー」はTikTok上で奇妙なプロジェクトを行なっている。彼らは、TikTokで毎日溢れる「音」に関連する大量のインターネットミームを採譜する活動を行なっている。彼らはいったい何を考えているのか?作曲家の梅本佑利が「スコアフォロワー」の創設者でありディレクターのダン・トラムテ氏に短いインタビューを試みた。

スコアフォロワー(Score Follower), ダン・トラムテ(Dan Tramte), 創設者
スコアフォロワー(Score Follower), ダン・トラムテ(Dan Tramte), 創設者

「私たちは、現代音楽の楽譜付きの動画を制作しています。私たちのビデオは、SCORE FOLLOWERとINCIPITSIFYの2つのYouTubeチャンネル、そして私たちの新しい作曲家ポートフォリオWebアプリscorefol.io、さらにはTIKTOKアカウントでも見ることができます。私たちは、全ての関係者から許可を得て、自社でビデオをキュレーション、ライセンス管理、制作しています。また、私たちは、YouTube、Discordサーバー、Facebook、Twitter、Instagramなどのソーシャルメディアを通じて、新しい音楽コミュニティの構築にも力を入れています。私たちの活動は、全ての人がアクセスできるインターネットの出会いの場を通じて、新しい音楽作曲家、演奏者、出版社、レコーディングレーベルなどで作品の露出を促進することを目的としています。」- スコアフォロワー(Score Follower)

 

梅本: スコアフォロワーのコンテンツ、特にTikTokをトランスクリプション(採譜)するプロジェクトには、非常に興味があります。こういった、コンテンツは、ヨハネス・クライドラー(作曲家)によるコンセプチュアル・ミュージックのように、スコアフォロワーによって作られた概念的な「芸術作品」と考えられるのでしょうか?

それらの創作物は、現代のSNSやインターネットコンテンツを批評しているようにも見え、とても興味深く思っています。

この点について、何か情報を提供していただけると幸いです。

 

 

 

 

トラムテ:私はヨハネスと友達ですし、確かに自分はコンセプチュアルな音楽をする人だと思っています。個人的には、私のこのTikTokプロジェクトをそういった美学的な観点で見たことはあまりないのですが、確かに関連性を感じます。私が考えるTikTokプロジェクトの最大のコンセプチュアルな要素は次のとおりです:

 

かわいい猫がピアノを演奏します。とてもかわいいです。しかし…

猫の上に楽譜が表示されると、猫がその作曲されたものを演奏しているように「暗示」されます(そして、それで、もちろん、格別にかわいい)。これによって、猫の役割というものが再構成されます。猫は、ランダムにキーを叩いて即興演奏しているのではなく、難解な楽譜を精密に解釈する、熟練した演奏家のように見えるのです。ある意味では、これは、猫のコンセプチュアル(概念的)な「エレベーテーション(昇華)」です。そして、ある意味では、現代音楽をからかっています(あまり軽蔑的な意味ではありません)、また、猫の即興演奏を今日の奇妙な音楽(現代音楽)と同等に扱っているのです。

 

 

トラムテ:個人的には、それはある意味で「コンセプチュアル」なプロジェクトですが、私はそれをそのような(コンセプチュアルな)観点で考えることにあまり時間を使いません。

 

 

 

 

 

梅本: なんと、あなたはヨハネス・クライドラーさんと友達だったんですね!彼の作品「チャーツ・ミュージック」では、株価チャートを音楽に変換し、そこでは、Microsoftの自動作曲ソフトウェア、「ソングスミス」を使用することで、その作品のコンセプトがより明確になります。私が考えるのは、それと同じように、Score FollowerがTikTokやインターネット社会の構造自体を作品のコンセプトとして使用し、ここで言うクライドラー作品にとっての「ソングスミス」が、スコアフォロワーにとっての「TikTok」なのではないかと思ったんです。

 

梅本: では、スコアフォロワーにとって、このTikTokプロジェクトにはどのような意味があるのでしょうか?それらはジョークのようなもので、この質問自体がナンセンスでしょうか?

 

 

 

 

トラムテ:個人的には、私たちがTikTokで書き写している「ノイズ」と現代のコンサートホールで聞く「ノイズ」には根本的な違いはありません。どちらもヒッシー(威嚇的)で不協和であり、美しく、ナーリー(捻じ曲がった)なものです。「美しくナーリー」なノイズが、それらをつなぐ糸なのだと思います。

 

 

 

梅本: 実は私は、日本/英語圏で、スコアフォロワーのTikTokプロジェクトのやり方を真似て、日本のTikTok上にある「音」にまつわるネットミーム(日本のTikTokやインターネットミームには、英語圏のミームとはまた違った、奇妙さや特徴があります)を採譜するプロジェクトを近々やりたいと思っています。

トラムテ:あなたのトランスクリプションを見るのを楽しみにしています。

 

 

 

梅本: ありがとうございました!

 

 

 

トラムテ:いえいえ!(今後も)連絡を取り合いましょう!