ときめき☆は〜とすろっと

Tokimeki☆Heart-Slot

 この作品は、マリンバとヴィオラのための作品である。初演が行われる名古屋市とその周辺には、多くのパチンコ・スロットメーカーが集結し、「パチンコの発祥の地」、「パチスロの聖地」とも呼ばれる。

 スロットマシンは、激しいライト点滅や、過剰な演出の映像に加え、いわゆる「確定演出」の音楽や、過剰に繰り返される音階や分散和音、鋭い高音など、音の作りもまた射幸心をあおる極めて特異なものとなっている。作者は、その音や構造を模倣しつつ、譜面上に不確定性を持たせる箇所を所々織り込むことで、この作品に遊戯的な要素を与えた。

 この作品は、基本的に、ヴィオラがトリガーとなって、マリンバが動作する仕組みである。ヴィオラのピチカートに呼応してマリンバ(スロット)が動き出し、ヴィオラがさらにピチカートを演奏すると、マリンバ(スロット)が減速する。そして、各奏者は一斉に(A)または(B)のモチーフを演奏する。このとき、どちらのモチーフを演奏するかは、各奏者の自由である。例えば、ヴィオラとマリンバの両方の演奏が(A)(A)のモチーフで揃う(アタリ)か、あるいは、ヴィオラが(A)、マリンバが(B)といった異なるモチーフでハズレを引くかは、不確定である。ただし、「確定演出」の直後には、必ずアタリ、すなわち揃ったモチーフが演奏されるように作曲されている。